第518号(2009年04月13日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com

History repeats itself (歴史は繰り返す)

北朝鮮の飛翔体発射が人工衛星でなくミサイル発射実験であったことは衛星が軌道に乗っていないことで明白である。2006年7月の北朝鮮ミサイル発射と同年10月の核実験の北朝鮮にとっての政治効果は3年分の原油と経済援助(ならず者国家返上による国際金融機関からの融資資格確保)の獲得であった。一方アメリカにとっての政治効果は、日本が難色を示していた安保理地位協定外(日本に義務のない)の沖縄の米海兵隊(8000家族)のグアム移転費用に対する対日要求のほぼ満額回答であった。アメリカは常に北朝鮮のミサイル発射や核実験はアメリカと同盟国(日本)にとって脅威であるというが、本当は対日脅威を増幅させるためであって、北朝鮮もアメリカも北朝鮮の脅威がアメリカを対象としていないことは両国阿吽の認識である。(最近アメリカの高官がうっかり口を滑らしてしまったが)

実は北朝鮮の脅威はアメリカと北朝鮮の共通の利益なのである。1998年8月30日のテポドン1号が秋田沖を通過した直後政府は重い腰を持ち上げ、将来兆円単位のコストがかかる日米共同MD開発(ミサイル防衛システム構築)の推進を決めた。いよいよMDのため今年から毎年5000億円を上回る予算を計上しなくてはならないから政府は財政難の折柄国民のコンセンサスを得る必要があった。幸い今回のミサイル発射で野党といえども5000億円予算に反対できないだろう。MD予算の大半はアメリカの軍産複合体へ流れるのは言うまでもない。MDは1998年の研究段階からいよいよ今後は膨大なコストを要する防衛施設建設段階へと向かう。北朝鮮の軍事脅威は必ずこうした節目に起こるのである。政府は今回の北朝鮮のテポドン発射が安保理決議違反であることを国連議長決議で明確にできたなどと喜んでいるようだが、「もののわかる政治家」は地団駄を踏んでいるのではないか。

日本が安保理常任理事国になって日本の国際的発言力が増強することをもっとも好まない国は同盟国アメリカに他ならない。アメリカが必要な時にいつでも北朝鮮が日本に脅威を与える体制下に日本がおかれている限り、アメリカは日本を安保理の名の下に支配し続けることができるのである。

自国の安全(命)を他国(他人)に100%委ねている日本は、まだ国(一人前)になっていないのである。1945年の敗戦以来日本はいまだに敗戦国のままである。世界の独立国の一員になるための唯一の要因は自国の安全を自国で守ることである。「平和とは戦争準備期間であり、軍縮とは低コストで戦争に勝つことであり、核開発禁止は国連常任理事国(核保有ライセンス国)が核を寡占することである」。誰でも平和を願うが、願わされていること(マインドコントロールされていること)を忘れてはならない。「平和ボケ」とは、真実を探求せず、「平和」という美しい言葉を念仏のように信じることである。信じることができるのは事実以外にはない。人間の歴史は依然として戦争の歴史である。日本はどこまで「知らぬが仏」を通せるか。“This is what matters”(それが問題である)。

(平和教信者の方々から総攻撃を受けるのは覚悟の上です)

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