第533号(2009年07月04日号)

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温故知新(古るきをたずねて新しきを知る)

本誌「時事直言」は1997年に始まりました。当時私と妻眞理子は読者お一人お一人にダイアルしてファックスを送っていました。発信日はいつも夜明けまでダイアルし続けたものです。
最近元外務次官の方が外交秘密文書を明るみにし、政府がそれを否定するなど物議をかもしています。真実を隠蔽しないで明らかにすることは、場所やタイミングにもよりますが、それ自体は悪いことではありません。しかし元外務次官という公職にあった方が、退官後国家の機密事項をあからさまにすることは元公務員として明らかに綱紀違反です。公務員は退官後もこうした機密情報に対しては拘束されます。今回の元次官の行為はしてはならない行為といわざるを得ません。またこうした違反行為を増長するようなマスコミの取り上げ方も私には感心出来ません。


 さて、我田引水となりますが、こうした問題は私のような者に任せたほうが政府も困惑しないで済むし、読者、国民も政治とはこうしたものなのか、日本はこのままでいいのだろうかと考えると思いますし、むしろ建設的ではないでしょうか。


 そこで今から12年前、「時事直言」が生まれたばかりの第5号(1997年5月)をそのまま掲載させていただきます。最後の方に、、、「日本国憲法」や「日米安全保障条約」で日本のアイデンティテe|(―の間違い)を否定し、安全どころか常に日本を危機にさらすことにより日本の支配を狙う米国の「本音」の証拠がどんどん出てくるだろう」と書いていますが、説明が無かったので、今回は第5号が沖縄返還に関わることですので、日本の「安全の要」と広く認識されている「日米安保の真実」についてご説明しておきます。


 先ず日本の安全の前に日本の危機とは何でしょうか。難しくいえば、主権が侵され、他国の支配下に置かれることです。武力攻撃を受けるなど具体的危機はありますが、それらは大なり小なり対日支配を目的とするものです。従って簡単に言うと日本の危機とは日本が他国に占領されることです。安全保障とは、「日本が他国に占領されないための保障」です。日米安全保障条約により、日本の憲法の及ぶ地域(行政官区内)に米軍基地が50箇所以上存在しています。米軍基地は治外法権ですから日本国憲法ではなくアメリカ合衆国憲法と行政権下です。また米軍の日本の行政管区内の軍事行動の自由が保障されています。本条約付帯の地位協定で日本は在日米軍の経費を負担し、米軍人と家族に国民が羨むほど多くの特権を与えています。さらに地位協定の義務外の「思いやり予算」で累積約6兆円を米軍に払ってきました。北朝鮮からテポドン2号が何度も北陸上空に飛来しましたが、アメリカは「あれは人工衛星だ」などと言って日本の安全には無関心でした。ある時は中国戦艦が日本の海域を侵犯しました。やはり米軍は無関心でした。北朝鮮の対日挑発、中国戦艦の日本領海侵犯、何故日米安保は機能しなかったのでしょうか。それは「日米安保は対日侵略条約」だからです!


 自国に他国の軍隊が大挙駐屯し、自国内の他国の基地に自国の憲法、行政権が及ばず、他国は軍事行動の自由を持っている。そして自国は他国の駐屯軍の自国内の経費を払う。この状態を定義すると、「自国は他国に占領されている」ことになります。米国は日本を軍事占領してきたので日本には戦後も今後も真の安全はありません。大変皮肉な表現になりますが、日本の安全は「米軍占領下の安全」ということになります。実際に在日米軍が安全を保障しているのは在日米軍基地だけです。これが「日米安保の真実」です。

 
これで戦後から今日までの不可解なことがすべてご理解いただけると思います。


 次回にお話しする「日本国憲法の真実」を知れば、「何をかいわんや」なのです。


 独立主権国家日本はどこにも見当たりません。


 では私の今から12年前の「非核三原則の大嘘」をお読みください。

増田俊男の時事直言!


NO.5
9752週号)

非核三原則(核を造らない、使わない、持ち込まない)の大嘘!


 佐藤栄作元首相の日記(1952-75)が朝日新聞から刊行される事になった。
 この日記と故若泉敬氏(1996年他界)の宣誓証言に基づく「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」(文芸春秋社)により、「沖縄に核が現存し、核部隊が駐屯し、新たな核の持ち込みが保障されている」事が証明されたのである。

 19691121日の日米首脳会談で2年後(1972)の沖縄返還が日米両国首脳により声明されたホワイトハウスでのセレモニ−の後、ニクソン大統領のすすめで大統領と佐藤総理の二人が宝石鑑賞という名目で大統領執務室の隣の小部屋に入り、二人だけになった。
 そこで若泉氏(佐藤総理の黒子として隠密裏に極秘合意書の作成に当たった)とキッシンジャ−が最終的にまとめあげた沖縄の核に関する極秘合意書が双方によりサインされたのである。

 その時二人がサインしたトップシ−クレット(極秘合意書)の全文を下記に示し、英文が表す真の意味を解説する。(本合意書の公式語は英語であるため)

 

TOP SECRET

AGREED MINUTE TO JOINT COMMUNIQUE OF UNITED STATES PRESIDENT NIXON AND JAPANESE PRIME MINISTER SATO ISSUED ON NOVEMBER 21, 1969

United States President:

 As stated in our Joint Communique, it is the intention of the United States Government to remove all nuclear weapons from Okinawa by the time of actual reversion of administrative rights to Japan; and thereafter the treaty of Mutual Corporation and Security and its related arrangements will apply to Okinawa, as described in the joint Communique.

 However, in order to discharge effectively the international obligations assumed by the United States for the defense of countries in the Far East including Japan, in time of great emergency the United States Government will require the re-entry of nuclear weapons and transit rights in Okinawa with prior consultation with the Government of Japan.
 The United States Government would anticipate a favorable response. The United States Government also require the standby retention and activation in time of great emergency of existing nuclear storage locations in Okinawa: Kadena, Naha, Henoko,and Nike Hercules units.

Japanese Prime Minister:

 The Government of Japan, appreciating the United States Government's requirements in time of emergency stated above by the President, will meet the these requirements without delay when such prior consultation takes place.

 The President and the Prime Minister agreed that this Minute, in duplicate, be kept each in only in the office of the President and the Prime Minister and be treated in the strict confidence between only the President of the United States and the Prime Minister of Japan.

Washington D.C. November 21, 1969
            R.N.
            E.S.

<直訳>

19691121日発表のニクソン米合衆国大統領と佐藤日本国総理大臣との間の共同声明に付いての合意議事録

米合衆国大統領

 われわれの共同声明で述べてあるごとく、沖縄の施政権が実際に日本国に返還される時までに、沖縄から総ての核兵器を撤去することが米国の意図である。そして、それ以後においては、この共同声明に述べてある如く、日米間の相互協力及び安全保障条約、並びにこれに関連する諸取り決めが、沖縄に適用されることになる。しかしながら、日本を含む極東諸国の防衛のため米国が負っている国際的義務を効果的に遂行するために、重大な緊急事態が生じた際には、米政府は、日本国政府と事前協議を行ったうえで、核兵器を沖縄に再持ち込みすること、また、沖縄を通過することの権利が認められることが肝要となるであろう。かかる事前協議においては、米国政府は日本政府の好意的(NOと言わない)回答を期待する。さらに、米国政府は、沖縄に現存する核兵器の貯蔵地である、カデナ、ナハ、ヘンノコとナイキ・ハ−キュリ−核部隊を、重大な緊急事態が生じた時に何時でも使用出来、活用出来る状態に維持する必要が求められる。

日本国総理大臣

 日本政府は、大統領が述べた前記の重大な緊急事態が生じた際における米国政府の必要事項を歓迎し、かかる事前協議が行われた場合には、(いかなることが有ろうとも)遅滞なくそれらの要求に応じるものとする。大統領と総理大臣は、本合意議事録を2通作成し、1通ずつ大統領官邸と総理官邸にのみ保管し、米合衆国大統領と日本国総理大臣との間で最高の警戒のもとに極秘裏に取り扱うべきものとすることで合意した。

19691121日ワシントンDCにて
         R.N.
         E.S.

<解説>

上記極秘合意書の重要部分は2点。

  1. The United States Government would anticipate a favorable response.の文の中でwouldを使ったことは、文法的には仮想法といい、「どうしても駄目なら仕方がないが--期待する」と、控えめで、遠慮をした表現であるのに対して、佐藤総理は、will meet the requirements without delaywillを使っている。これは規定の事実や強い意思を表す表現で、「どんな事があっても決して遅れることなく絶対に要求に応じます」と、強い意思と決意を表している。
  2. (返還時に)沖縄の3地区に現存する核兵器と核部隊は現状のまま(撤去することなく)維持し不測の事態には何時でも活動出来るようにしておくこと。

前文の、米国は沖縄返還までに総ての核兵器を撤去する意図がある、とした文中のintentionの意味は、「その気が無いではない」ぐらいの意味で、条約上は「全く責任を負わない場合」に使う用語である。一方佐藤総理のwill meet the the requirementsは確約であり、「責任を負う」、義務を表す表現である。

 常日頃私が「沖縄には核と核部隊が現存している」と言い続けている事の証明。佐藤元総理以来我が国の歴代政府が世界に誇る「非核三原則」はお笑い種なのである。

 今後マッカ−サ−が作った「日本国憲法」や「日米安全保障条約」で日本のアイデンテe|を否定し、安全どころか常に日本を危機にさらすことにより日本の支配を狙う米国の「本音」の証拠がどんどん出て来るだろう。まるで日本人が日本を忘れる時を待っていたかのように。





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