第565号(2009年12月14日号)

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普天間基地移転問題特集
鳩山持論と与党内事情

普天間基地の返還が日米間で正式に決まったのは1996年12月2日で、向こう5年から7年以内に全面返還するというものだった。ただし、「十分な代替施設が完成し運用可能になった後」という条件が付いていた。代替地は1,300メートルの撤去可能な滑走路を備えた海上ヘリポートとし、場所は当初沖縄本島東海岸と明記されていたが1997年になって名護市辺野古の米軍基地キャンプ・シュワブ沖が候補地とされた。
移転先に反対する知事や市長、条件付賛成の知事や市長が入れ替わりながら時間が経過し、先の安部内閣、麻生外務大臣の時沖縄は概ね賛成の態勢になった。
ところが今年8月の衆院選で沖縄全区から選ばれた議員は全員現移転先反対派。
次期知事も市長も反対派になることが明らかになっている。
鳩山首相は今年の選挙戦中、普天間基地移転先は他県のみならず海外の選択肢もあると発言している。民主党は衆院では圧倒的多数を制しているが参院では社民党など他党の協力無しでは過半数に満たないことから社民党の福島みずほなどは、もし鳩山政権が2006年合意を支持するなら連立離脱もあるなどと述べている。
このように鳩山首相の持論のみなならず与党内事情から鳩山首相としては普天間基地移転問題の結論は簡単に出せなくなっている。

アメリカの国力衰退と中国の台頭

アメリカの経済力は毎年衰退している。近年の世界経済バブル崩壊はアメリカが元凶であった。2007年末からの世界不況もアメリカのサブプライム・ローンの焦付きから起きたCredit Crunch(信用収縮)が主因である。
一方アメリカの軍事力も、イラク、アフガン軍事介入がデッドロックに陥っているのを見てもわかる通り、もはやアメリカの国際軍事覇権は地に落ちている。
反して中国の台頭は目覚しいばかり。世界不況の最中8%を超える成長を続け今や世界経済の牽引役になろうとしている。軍事力は毎年2桁のピッチで増強している。
こうしたアメリカの弱体化と中国の台頭が続く中でアメリカは中国と戦略的パートナーシップの名の下に中国を運命共同体にしようと懸命である。

新たな極東情勢

アメリカの積極的な中国接近でアジアの政治状況が大きく変わろうとしている。
東西冷戦が1991年に終焉し、今や日本の安全を脅かす国は北朝鮮だけとなった。
米中が運命共同体の道を進もうとする将来の極東の安全とは何なのか。
アジアの軍事情勢の変化に対し果たして3万6千人体制の米軍沖縄基地は要なのか。日本唯一の敵国北朝鮮に対する安全保障に今の規模の沖縄米軍基地が必要なのか。今こそ変り行く世界の軍事勢力マップをグローバル時代の政治・経済力学で分析することが求められている

普天間基地移転を単に基地移転問題にしてはならない

鳩山首相が日米対等外交を標榜するなら、アメリカが最も恐れる日中関係の強化は不可欠となる。
鳩山首相のすべきことは、次期参院選で自らの日本の指針と外交路線を明確に国民に問うことである。今年8月の選挙では政権交代だけを求め、国民の圧倒的支持で今や政権交代が実現した。普天間基地移転問題を単なる沖縄の一基地の移転問題とせず、また過去の経緯に捉われることなく、この問題を契機に鳩山首相は国家指針と外交政策の確立に取り組むべきである。普天間基地移転の決着は自らの安全保障政策の指針の基に英断すべきである。





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