Trade War (貿易戦争)と不滅の中国
エスカレートする米中貿易戦争
ダンピングによる不平等貿易問題は通常先進国から発展途上国に向けて提訴されてきた。2009年ダンピング(自国の価格またはコスト以下での輸出)のかどでWTOに提訴された件数は約450件に達する見通しである。2008年の倍である。
中でも中国に対する抗議やWTO提訴は群を抜いている。
ところが最近一転して中国が提訴される側から提訴するほうへ回ってきた。
2009年9月オバマ政権は突如中国のタイヤに35%の関税を課したことがきっかけとなって米中間でTrade Warが勃発した。中国は直ちにアメリカの鶏肉と車のパーツにダンピングの容疑ありとアメリカに通告、10月になると鶏肉、タイヤに36%の関税を課した。これに対抗してアメリカは11月4日と5日に中国産スティールパイプ、さらに光沢紙と塩含有製品にダンピング税を課した。その24時間後中国はアメリカ製自動車パーツの輸出は完成品自動車の輸入税逃れだとして調査を開始した。もし完成品並みの関税がかけられると今発表しているビッグスリー(フォード、クライスラー、GM)の経常利益は大幅に下方修正されるだろう。続く11月10日中国はナイロン製造上必要なアメリカ製化学薬品に35%の関税を課した。同じく10月10日中国は発電機に使う特殊金属の輸入に調査終了まで罰金を預けるよう命じた。続いてアメリカは2009年末中国産鋼鉄パイプに新たに再関税をかけると発表した。
アメリカの国務省に言わせると対中国製品に対する対ダンピング関税額は米中貿易総額の1%に満たないので大した問題はないこと、また問題があるのはなにも米中間だけではなくヨーロッパ等先進国間でも起きており、こうした問題は通常の貿易取引にはつき物であり、幾多の問題にも関らずこれまでアメリカとヨーロッパや他国との関係はきわめて良好である。だが、中国がアメリカの赤字国債引受け最大手であることを考えると、オバマ政権はこの対中国貿易問題で米中間がギクシャクすることをことさら恐れているように見える。
中国のスタンス
対中貿易戦争が起きているとするなら火をつけたのはアメリカであること。
また中国はあくまで自由貿易を望み、中国の対中不当輸出の主張は正当なものであると主張する。アメリカの不当な対中関税措置に対抗してドル債権の不買を主張する向きもあるが現在人民元が米ドルとペッグ制になっている限り実現の可能性はない。
それは自らの金融資産を暴落させる自殺行為となるからである。
中国のGDPは昨年末日本を抜いて世界第二位になった。
中国は対米経済依存度を落とし、逆にアメリカや日本の対中国依存化を狙うだろう。
そのために中国に必要なことは、更なる内需投資増大と、その結果の国内消費の拡大である。中国の国内消費がアメリカの消費を抜く時人民元はドルから解放され、世界経済は大きく中国に依存してくる。中国が知らねばならぬことは経済の大原則、「消費者は王様」である。造る者でなく、貸す者でもない。支配者は買う者であり、借りる者であることを中国が知れば、それだけ中国の世界支配の日が早まる。
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