「失望」という名の「仮想」
私は、先週前半は引き続き南欧の財政問題が残るのでさえない相場になるが後半は市場の関心がアメリカの経済ファンダメンタルに移り、特に週末に発表される雇用統計のいい結果の期待で急上昇するので週平均では上げて終ると(私のタイムリーなマーケット情報誌)「ここ一番!」で予想した。
確かにニッケイは私の予想通りの結果なったが、日本の金曜日の後に続くアメリカの金曜日、NYダウは323ドル(3.2%)の中暴落となり、あっさり1万ドルを割り込み9,931ドルとなった。期待された金曜日発表の雇用統計によると5月の雇用は単月の伸びでは10年ぶりの431,000人増という高水準に達し失業率は9.9% から9.7%で改善された。しかし民間セクターの雇用増が予想の175,000人増をはるかに下回る41,000人で、残りは政府の国勢調査のための臨時雇用による増加であったことが判明するや、上げて始まったNYダウは一気に下落に転じたのである。
来期からの連続雇用増で5月を景気低迷最後の月と認識しようとしていた市場は大きく失望した。そこへギリシャに続いてハンガリアの国債債務不履行の可能性と、フランスのSociete Generale銀行の大幅赤字転落、さらに中国の経済成長の鈍化が確実視されてきたので又もや「不況への逆戻り」の不安が広まる結果となった。世界の政治環境も悪く南北朝鮮の緊張、イスラエルとパレスチナ平和後退、タイの内乱、イランの核攻勢、等々小さい政府下の世界は政治コントロール力を失いかけている。日本では大胆にも「アメリカに追従せずモノを言う日本」を標榜して政権の座に就いた鳩山由紀夫氏があっさり匙を投げ出した。
アメリカではオバマ大統領が鳩山由紀夫氏と同じく有言不実行で人気が下降線。
これだけの経済と政治の悪条件が揃うことはめったにないことである。
事実は小説より奇なり
雇用について言えば、2009年初期では月間50-60万人の雇用が失われていたのに2010年5月に41,000人増えたということは大きな雇用の改善である(減るのと増えるのとでは大違い)。アメリカの製造業(実体産業)の業績は好調で従業員の収入は飛躍的に向上している。耐久消費財の売上も、新築、中古とも住宅の販売数も増加の一途。
またアメリカ世帯の貯蓄性向(可処分所得から貯蓄に回る割合)は過去最高の4%台でストップして今後下がる傾向にある(消費性向が伸び始める傾向)。
またアメリカの各州は2010年第一四半期年率で5.4%の歳入増となった。
2009年まで赤字続きの米全州の財政は本年から黒字に転じてきた。
政府の財政支援と緊縮財政に加えて税収増が大きく貢献している点が大きい。
アメリカの中身である全州政府はすでに財政危機を脱出できているのである。
このようなアメリカ経済の現実を直視すればNYダウは300ドル下がるどころか上昇してもおかしくない環境にある。
私は「市場は過大と過少評価の行ったり来たり」と定義しているが、現実の評価に市場が正しく連動したらギャンブル性が喪失し株式投資をする人はなくなり、国債が買われる。中でも国民が政府の借金のほぼ100%を持ち続けている世界一財政安全国家日本の通貨(円)が定期預金のように買われることになり、円がかつて付けた(1ドル当たり)70円台を突破することになるだろう。そうなると貿易立国日本にとって由々しき問題となる。やはりアメリカ(ラスベガス)主導のギャンブル・資本主義は日本にとって歓迎すべきなのである。
「架空と事実の狭間で儲けるにはどうしたらいいのか」?
大事なことは市場のトレンドと投資のタイミングだ!
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