第626号(2011年01月14日号)

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読みが深くなってきた米市場

先週ガイトナー米財務長官は議会で、本年の第1四半期までにDebt ceiling(負債の上限)を上げないとアメリカ合衆国の信用が問われる事態となりアメリカ経済は大打撃を受けかねないと証言した。
昨年11月の中間選挙で緊縮財政を主張してきた共和党が下院で過半数を占めているので、更なる債務増大を意味するDebt ceilingの上限を上げることには共和党は間違いなく反対する。そうなると財務長官の警告が現実になると考えマーケットが混乱を起こしても不思議ではなかったのに先週からNY株価は上昇した。一方、日本では国会議員中で最も財務に明るい与謝野馨元財務大臣が、「やがて国の借金が国民の総金融資産を上回り国民が公債を買えなくなる時が来る」と発言したことから上昇中のニッケイ平均に一時ストップがかかった。
私は常日頃日本の国債はほぼ100%国民が保有しているから国の借金がGDP比200%であっても(自国民以外に)売られることは無く、財政の破綻も円の暴落もあり得ないと述べている。しかし与謝野元大臣の言われるように国の借金が国民の金融資産を上回れば確かに(たとえ売られなくても)国民は自国の国債を買えなくなる。財政通の与謝野氏の発言が市場にネガティブな影響を与えたのは当然だったのである。

日本市場はまだまだ、、

実はガイトナー財務長官の米議会証言は「真っ赤なウソ」である。米市場は、それがたとえ財務長官であってもそう簡単に騙されなくなってきている。
共和党が主張するように確かにDebtの上限を上げるのなら、財政支出削減や増税の抱き合わせでないと(どこかの国のように)借金を子や孫に先送りすることになる。しかし財政健全化のために福祉予算を減らし、増税すると言えばどんな政党でも政権は取れない。では借金枠の拡大を求め、福祉予算を増やし減税をするオバマ大統領は無責任なのだろうか。すでにアメリカの累積赤字は$14.01trillion(1,170兆円)に達し2011年の赤字予想は$1.4 trillion(117兆円)だから年内$15.4 trillion(1,280兆円)となりGDP比ほぼ100%に達する。
では、ガイトナー財務大臣の無謀とも思われる借金枠拡大の主張で何故市場はプラス反応を示したのだろうか。それを知るには財政に関するアメリカ合衆国憲法を知らねばならない。米憲法には「国債元本と同金利は最優先に払われねばならない」と規定されている。と言うことは米国債元本と金利は必ず、例え福祉予算を犠牲にしてでも払われるのである。国民ではなく憲法を利用した福祉予算削減策である。従ってガイトナー財務長官の発言は「モノを知らない国会議員と国民を相手にした根も葉もない脅し文句に過ぎなかった」のである。
ガイトナー証言で株価が上がったということはアメリカのマーケットは「モノを知っていた」のである。
与謝野氏の発言も全く同様で、日本にはいわゆる埋蔵金があちこちにある。
その一つは国家の財務会計基準。これをアメリカ並(国際基準)にすれば現在の債務引当金(500兆円強)が負債から資産に代わる。現在国民の金融総資産は約1,500兆円、国債残は700兆円以下だから、まだ埋蔵金を使うところまで来ていない。与謝野氏もガイトナー財務長官同様、国会議員と国民がモノを知らないことをいいことに与党がいかにも無責任であるかのように見せかけたに過ぎない。アメリカの市場はモノが分かっているが日本の市場はモノが分かっていないので与謝野発言でニッケイが下がったのである。
今度発売する私の「小冊子」Vol.20は、こうした経済・政治のウソとホントを列記することにした。大変面白いばかりでなく、投資家の皆様のお役に立つと思います。


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