世界経済同時低迷
アメリカは2008年以来量的金融緩和を続け、先進各国もアメリカに右へ習えで世界経済は何とか不況を脱することが出来た。
ゼロ金利と金融緩和は緊急時の政策、景気が回復したらいわゆる出口戦略でインフレをカバーする程度の利上げ政策に戻るのが正当である。
アメリカは今月6月末をもって金融緩和を終えると1カ月前のFOMCで発表しさらに今週バーナンキFRB議長がQE2は延長しないと公言したので今後アメリカの金融緩和の可能性は無くなった。アメリカの雇用は年初来月平均20万人以上増加していたのに5月になると一気に5.7万人に落ち込み失業率は9.2% に逆戻りした。金融緩和の恩恵で株式市場と商品市場は活性化し金融資産は明らかにバブル化している。アメリカでは今原油価格が1ガロン4ドル前後まで上昇し家計を圧迫、消費にしわ寄せが来ている。さらにサブ・プライム・ローン(信用度の低い層へのローン)の焦げ付きによる競売準備群の不良債権が銀行の帳簿から消えるにはまだ4,5年かかる。そのため競売物件が市場に出回り続け、不動産価格は下がり、何時まで経っても上昇に転じる気配がない。
消費の伸びは住宅の含み資産によるから住宅価格の下落は消費にとって最悪である。
中国経済の高成長はGDPの13%を占める不動産業の高成長(バブル)に負うところが多かったが、昨年来の引き続く利上げと銀行窓口規制の効果で大都市の不動産価格は急落し始めている。中国北西部の大規模インフラ開発による内需拡大で不動産バブル崩壊のパニックに至ることは無いが、今後中国経済の成長が鈍化するのは確実である。中国への輸出に重点シフトしてきた中南米やアフリカ経済は今後大きな痛手を受けるだろう。ヨーロッパも南欧の財政危機問題の解決には時間がかかり当分景況感の回復は望めない。
アメリカ経済の景気回復の長期化、中国経済の成長鈍化、アジア、中南米、アフリカ経済低迷、さらにヨーロッパの景況感の回復の遅れ等で世界経済は、向こう1−2年は停滞せざるを得ないだろう。
死んでもただでは起きないアメリカ!
アメリカは財政債務超過、景気低迷、低成長が確実になってきたが、経済界にも政界にも危機感が無いのは「不自然」である。
5月17日から2日間イスラエルのネタニヤフ首相が訪米、オバマ大統領と首脳会談をしたが、(本誌でも述べたように)オバマ大統領はパレスチナとの中東和平交渉の基本線として1967年時の国境線を提案した。
オバマ大統領は何故イスラエルが絶対に認めるはずのないことを知りながら全く「不自然」な提案をしたのだろうか。
これはアメリカに限らず高度な政治国家では常識的な「予告」なのである。
私が2001年9月11日のセプテンバー・イレブンを予告出来たのも「不自然」なニュースに気付いたからであった。
これも本誌で述べたことだが今先進国経済で買えるのは日本経済だけであることは間違いないから7月になると市場はJapan as No. 1(ジャパン・アズ・ナンバー・ワン)の様相となる。
ところがその後「大事件」が起き世界経済の様相が一変する。
「アメリカの世紀のカラクリ」と言っておこう。
その後が本当の世界経済である。
日本経済にとっては正に「油断大敵」である!
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