ミニ・リセッション終了!
3月11日の日本の大震災と原発事故によるサプライ・チェーン問題はアメリカの製造業に悪影響を与えただけでなくアメリカの消費者に日本の文化でもある節約の精神を植え付けることになった。折しも原油価格の高騰でガソリン代が1ガロン(1ガロン=3.78リットル)4ドルになろうとしていたので車社会のアメリカの消費者が日本の「自粛」を見習ったのは当然だったのかも知れない。
オバマ政権はQE2(第二次金融緩和)を6月末に終わらせ、アメリカ経済をスムーズに自律経済成長に誘導する目論見であったが日本の震災の影響による自動車メーカーなど大手製造業の一部操短、5月の失業率悪化と消費者心理の冷え込みに加えて解決済みと思っていたギリシャ財政危機問題が再燃したことなどで次なる経済戦略に変更はないが、その結果が出るのは遅れることになる。
アメリカ企業が概ね好業績を挙げているにもかかわらず雇用が伸びず失業率が未だに9.1%(5月)という高水準なのは企業側に経済の先行きに対する不透明感があるから。企業利益が上がりNY株価が5月初旬に向けて12,800ドル台まで上がったにもかかわらず、どうしてもアメリカ経済からUncertainty(不確かさ)を拭い去ることが出来なかった。ではアメリカ経済の不確かさは何が原因だったのだろうか。それは不況が始まった2007年末から今日までオバマ政権の主導で世界の先進国が採ってきた大金融緩和政策である。金融緩和とは人間に例えれば激痛に対するカンフル剤である。タイノ―ル(鎮痛剤)で頭痛は治るが頭痛の原因は治らない。アメリカ経済の不確かさとは、金融緩和で経済の痛みはとれたが本当に経済は健全になったのだろうかという疑問である。カンフル剤を飲み続けている間疑問は解けない。
6月30日でFRB(連邦準備理事会)による600億ドルに及んだ国債買い取りによる金融緩和は終了する。頭痛がしたら今度はカンフル剤に頼らず自分で直さなくてはならないように、今後のアメリカ経済も実力が試されることになったのである。7月からはアメリカ経済から不明確な期待も不安も無くなり、アメリカの経済ファンダメンタルズそのものがアメリカ経済になる。
アメリカ経済は今までのようなカンフル剤的金融主導から実力の製造業主導になることを銘記しなくてはならない。つまり経済の牽引車がソフト産業からハード産業に移行すると言ってもいいだろう。従って今後投資家はアメリカの製造業の動きに注目しなくてはならない。
米商務省の発表によるとアメリカの耐久消費財の注文が5月は1.9% 伸び、その他機械、コンピューター、自動車など主要産業の注文も増加し、すべての製造業が在庫を増やし始めていることが明らかになった。
この事実で今後アメリカの製造業が設備投資を増やして来ることが確実になったのである。
こうしたタイミングに合わせて6月24日オバマ大統領は、官民学一体で今までの旧式製造所をロボット化、ナノ・テクノロジー化、超ハイテク化するプロジェクト、「アメリカ製造業ルネッサンス」を発表、早速大型予算措置を採ると表明した。世界に先駆けてアメリカは製造業の体質大改造を目論んでいる。
遅ればせながら私が名付けた「オバマ・マジック」が始まろうとしている。
はたしてオバマ大統領の金融から製造へのバトン・タッチは成功するだろうか。
確かなことは、ほとんどのアナリストや評論家が言うアメリカの景気後退は本当ではない。駄目だ、駄目だと言いながらも、「人の噂も75日」。
ミニ・リセッションは金曜日(アメリカ時間6月24日)で終わったと申し上げておく。
*「ここ一番!」の読者の皆様には本日、「本格的株価上昇の時期は何時か」、「最後の買いチャンスは何時か」、「売り時は何時か」についてのアドバイスをお送りいたしました。
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