アメリカ経済主役交代
私は6月24日と27日の本誌で、「ミニ・リセッション終了(株価下落終焉)を宣言、ほとんどのアナリストが主張するアメリカ経済後退論を全面否定、金融緩和(QE2)というカンフル剤投与終了で実像が見えてきたのでアメリカの製造業からUncertainty(経済見通しの不透明感)が払拭され、製造業が新規採用を始めたので雇用が増大する。今後のアメリカ経済は実体経済である製造業主導に変わる。すでに主要製造業は注文急増を受けて在庫を急ピッチで増やし始めており今後設備投資増強に向かうのは確実。従って今後のアメリカ経済を読むにはアメリカの製造業の動向に注目することが重要であると述べた。
また6月27日「ここ一番!」の読者には「本日が最後の買い場」になると「買い指令」のアドバイスを出した。(6月27日のニッケイ平均株価と本日の株価を比較して下さい)
先週金曜(7月1日)ISM(サプライ・マネジメント・レポート)はアメリカの製造業景況感指数が55.3ポイントに上昇したと発表した。(50ポイントを超すことは製造が拡大していることを示す) 連続23か月の上昇である。アメリカの製造業の先行きの明るさから金曜日のNYダウ平均は168.43ドル上げ12,582.77ドルとなり、年初来高値に接近してきた。日本のサプライ・チェーン問題の影響で5月は製造が若干落ちたが6月は完全に回復した。今後は設備投資の伸びに注目が集まることになる。
私は「7月からアメリカ経済は本格的に自律成長に向かい、株価も長期上昇トレンドに入る」と述べたが、3月11日の日本の大震災と原発事故の影響で「アメリカ経済の方向転換に変わりはないが、オバマ・マジック効果が表れるのは遅れる」と従来の予測を修正してきた。
アメリカの株価は7月1日から好調なスタートとなったが、このまま長期上昇トレンドにはならない。製造業が伸びてもGDP寄与度は30%だから成長を押し上げるのは限定的。どうしても70%を占める消費の伸びがなくては高成長は望めない。ガソリン代が5月の1ガロン4ドルから6月は3.55ドルに下がったので消費者は家具や耐久消費財に向かい始めているので今後限定的ではあるが消費の伸びが見られるから株価が上がるのは間違いない。市場から不透明感が消えたことで新たな市場参加者が増えることも株価にプラスである。
しかし、消費が本格的に伸びるには住宅価格が上がり、含み資産が増え、クレジット枠(信用枠)が増えなくてはならない。消費を押し上げ続けることの出来る、いわば健全な住宅需要は$1.5 trillion (約120兆円)であるが現在はまだ約半分の758 billion である。今後アメリカの中央、地方政府の緊縮財政で引き続き公共投資は落ち込むので内需は期待できずアメリカの製造業はどうしても中国を中心とした外需に期待がかかる。ところが金曜日(24日)中国政府は6月の中国の製造高が28カ月中最低に落ち込んだと発表した。アメリカ経済にとっては来年の中国経済成長に期待するしかなくなる。本年のアメリカの経済成長はやや楽観的に見て2.5%がいいところだろう。
住宅をはじめ内需に問題はあるものの、今後しばらくNY株価は年初来最高値(12,800ドル台)を目指すだろう。
セプテンバー・イレブン(2001年9月11日)の10年目に当たる9月にイスラエルにとって「最悪の事態(1967年現在の国境線とパレスチナ国家承認)」になりかねない「国連総会」がNYで開かれる。NY地裁でケニアとタンザニアのアメリカ大使館同時爆破(1998年8月)の容疑者9名の裁判が予定されていたのが(セプテンバー・イレブンの翌日の)2001年9月12日であった。
もし、セプテンバー・イレブンがなく裁判が開かれていたらアメリカ大使館爆破の真犯人が世界に知られることになり、ある国が「最悪の事態」になるところであった。投資家の皆様は、9月は「お休みの月」にした方がいいだろう。
セプテンバー・イレブンの当日、爆破されたWTC(ワールドトレードセンター)に事務所を持つある大手証券と投資銀行が臨時休業にしたように。何も知らなかった日本の富士銀行(当時)は8名の犠牲者を出した。「君子危うきに近寄らず」である。
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