第692号(2011年12月12日号)

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EU首脳会議は「絵に描いた餅」の先送りだが、、、

先週12月9日に終わった欧州首脳会議で決ったことは欧州債務危機に対するセーフティーネット(安全網)と英国を除外したEU(欧州連合)加盟26カ国参加で制裁条件付き財政規律新条約を作ることであった。安全網はEFSF(欧州金融安定ファシリティー)4,400億ユーロ、ESM(欧州安定メカニズム)5,000億ユーロと、ユーロ圏各国中央銀行拠出1,500億ユーロに中国、日本などから調達する500億ユーロを加えてIMF(国際通貨基金)に融資する2,000億ユーロの合計1兆1,000億ユーロで賄うことを決めた。
新条約で均衡財政を義務付けられる加盟国は予算案を自国の国会に提出する前にEUの審査を受けることになり将来の財政統合に半歩踏み出すことになる。
今回の欧州首脳会議決定のリスクは安全網の資金規模1兆1,400億ユーロが実際に欧州債務問題解決にとって十分かという点である。PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の内のイタリア一国だけの債務で1.8兆ユーロだからとても十分とは言えない。
次に各加盟国の中央銀行の出資が2012年中にどんどん回って来る問題国の債務返済期日にタイムリーに間に合うかという問題もある。
すでにイタリアの国債が売り込まれ利回りが再び上がり始めているように今後問題加盟国の国債利回りが上昇してくればEFSFとESMの資金調達は難しくなる。そこで当然ECB(欧州中央銀行)に期待がかかる。しかしECBはあくまでも欧州の銀行の銀行だから資金調達能力が落ちている欧州銀行の支援はするが、もとよりEFSFやESMの資金調達機関ではないし、いわんや問題債務国の債券を買い続けるようなリスクは踏まない。だから安全網に関する限りECBに期待は出来ない。さらには財政規律の新条約は加盟各国で批准しなくてはならないというリスクがある。イギリスが新条約に強く反対したように、はたして参加各国の議会は自国の財政主権を制限されることを認めるだろうか。
私や市場が考えているように、やがて今回の決定が「絵に描いた餅」でしかないことが分かって来るだろう。


アメリカとドイツの「思う壺」!
すでに世界最大のヨーロッパ株式市場(ユーロネクスト)は手回しよく2007年末からの不況が始まる前にニューヨーク証券取引所(アメリカ)と合併している。
ギリシャやイタリアの債務国問題で欧州の諸銀行は欧州の問題国債券の比重を減らし続けているためドル不足に陥り世界の主要6中央銀行のスワップ協定活用で問題国債券をドルに切り替えている。その結果、ヨーロッパ金融市場でドル資産保有率が日増しに増大している。ドルは2000年に欧州市場をユーロに明け渡して以来再び欧州金融市場に返り咲こうとしている。アメリカとドイツに残る次の課題は欧州の財政支配。丁度20年前、通貨同盟を織り込んだ1991年のマーストリヒト条約に欧州主要国が合意した時ドイツはアメリカの合意を取り付ける役目だった。その時の「欧州の統一(財政)はドイツ」、「欧州の金融(市場)はアメリカ」の暗黙の合意が今実現しようとしている。メルケル首相が「今日はくしくもマーストリヒト条約の合意から20周年の日だ」と感慨深気に言った言葉は実に重い。これからさらにアメリカの利益代表の格付機関がユーロ非加盟国(ハンガリーのフォリントが筆頭)を含め格付を下げれば次々とデフォルト確定国が市場に曝され市場は混乱する。2012年3月前にギリシャのデフォルト(債務返済不能)危機が再燃すると示し合わせたようにドイツもECBも救済しない。「明日は我々か!」と加盟各国はパニックとなり、ドイツとアメリカの陰謀を知っているイギリスを除く26カ国は国家存続と引き換えに自ら進んで財政主権を投げ出すだろう。
アメリカの格付会社が欧州各国の国債格付を下げれば下げるほど欧州銀行は保有債券のドル化を進めるから益々欧州金融資産はドル資産化する。格付会社(アメリカ)の働きでドイツの欧州財政統一は加速し、ドルの欧州市場支配は進行する。その時のためにECBに一切リスクを踏まさず、IMFが出動するかしないかは拒否権を持つアメリカが決める。
私の言う「陸の時代」の国盗り物語は始まっている。「陸の時代」は「小さい政府」から「大きい政府」に向かわなくては存続できないことを教えている。
「自由から規律」、「個から全体」そして「海の時代」の「成長時代」は終わった。もうこれからの21世紀の道筋は明確になった!自分は新しい時代の何処で何をしたらいいのか。増田俊男の「小冊子」(Vol.31)で勉強して下さい。


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