イタリアがうらやむギリシャ
私の滞在中イタリアの専門家は口を揃えて「ギリシャにしてやられた!」と悔しがっていた。ギリシャ支援は2010年の第一次支援と今回の第二次支援を合わすと合計約26兆である。さらに今回の民間国債保有者から約10兆円もの債務軽減に成功した。
ギリシャは民主主義発祥国。ローマはギリシャが考え出した民主主義を手段にして覇権を世界に拡大した国。今イタリア(ローマ)がギリシャ(アテネ)に悔しがるのは「民主主義の狡猾さ」を先取りされたからである。ギリシャのパパデモス首相は国債デフォルトの回避が確実になった3月9日、「歴史的な成功」と言い、「ギリシャの将来に希望の窓が開く」と言った。歴史的成功とは「狡猾な民主主義をギリシャが先行して使った」ことであり、ギリシャの将来の希望とは、4月末の民主主義選挙で「国民の希望が適う」と言うことである。
ギリシャのパパデモス首相はもとよりギリシャ国民が1,300億ユーロを手にする為に受け入れざるを得なかったEUとIMFから過酷な条件を4月末の総選挙で選ばれる新内閣が反故にすることは百も承知している。ユーロを自国ギリシャの通貨にした事が財政悪化と国債返済不能の唯一の原因であることも百も承知だから選挙後の5月になると「主権者国民の意志」を尊重してユーロを捨てて自国通貨を従来のドラクマに切り換える予定になっている。ドラクマには債務がない上ユーロに比して下がるのでギリシャの主要産業である衣料品、船舶、タンカー等の国際競争力が高まり一気に景気が向上することも決まっている。ギリシャのベニゼロス財務相が「これでギリシャは新しい出発点に立てる」言ったのは、これで「通貨ドラクマで新たなスタートが出来る」と言う意味である。同大臣は愛国的仕事を終えたことで辞意を表明したのである。
ギリシャは初めからEUとIMFの条件など無視するつもりであったのである。
イタリアがジダンダを踏むのは当然である。ESM(欧州安定メカニズム)に5,000億ユーロ(約50兆円)が集まることなどあり得ないこと。ただ欧州は欧州の責任で自助努力をしていると世界に思わせる為に過ぎない。
5月から南欧諸国にHaircut contagion(債務軽減ブーム)が起きるだろう。
ポルトガルがギリシャと同じ債務軽減オファーを出してきたら欧州首脳は一体どんな理由で拒否出来るのだろうか。第二のギリシャを出す前に欧州は経済主権否定の欧州財政統合に向かわざるを得ないのである。
欧州経済の帝国化路線が決まる6月末まで暴落した株価が上がることはない。
「略奪哲学民主主義の真実」については今回の小冊子で述べることにする。
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