スペイン救済10兆円の有効期限は今月末まで
ギリシャ、アイルランド、ポーランド、さらにスペイン等ユーロ圏の過剰債務国が国債デフォルト(不履行)に追い込まれる中でEU(欧州連合)はユーロ体制維持の為にEFSF(欧州金融安定化基金)、ESM(欧州安定メカニズム)やIMF(国際通貨基金)を動員して金融救済に追われている。6月9日のユーロ圏17カ国蔵相電話会議で破綻に追い込まれようとしているスペインの銀行救済の為EFSFから約10兆円の救済を決めた。スペインは勿論EUもIMFもスペインに起債能力が無いことが分かっているので国際金融救済が必要であることは十分承知していた。しかしスペインのラホイ首相はスペイン救済を決めた当日(9日)までNo bail out necessary(救済不要)と言い続けてきた。その訳は事前にEUに救済を要請すれば当然ギリシャ救済のように財政規律を求められ、国民の反対運動が起き、誕生後まだ6カ月の内閣は危機に追い込まれることになるからである。スペインに混乱が起きたままで6月17日のギリシャ選挙を迎えて万一ギリシャのユーロ離脱にでもなれば、スペインだけに止まらずイタリアに波及し欧州金融安定化基金(EFSF)、欧州安定メカニズム(ESM)、さらにはIMF(国際通貨基金)の資金能力では対処できなくなり、ユーロ体制破綻に追い込まれる。
5月30日にドイツのショイブレ財務相とデキンドス経済相との間で、スペイン救済を欧州蔵相会議で決める6月9日までスペインは救済不要と言い続ける密約を交わしたのである。
先進国の財政破綻目前
こうした「芝居」の繰り返しを見ても欧州信用危機はすでに国際支援を持ってしても救済出来ない状況に陥っていることが分かる。
ギリシャ支援もスペイン支援も当事国にとっての国際的金融支援は国際的債務増でしかない。会社で言えば手形の決済日に支払いが出来ず、取引銀行が融資してくれないので新規手形を担保に公的資金を借りるようなものである。
国で言えば赤字国債、会社で言えば融通手形を乱発することに変わりはない。
国で言えば国際金融救済は国債デフォルトの先送り、会社で言えば手形不渡りの先送りでしかない。国債デフォルトを先送りした国で経常収支が黒字又は黒字の見込みがある国以外の国は必ず国債デフォルトに陥る運命にある。
国債デフォルトしない国は、恒常的経常収支黒字国上位の1位ドイツ、2位中国、3位サウジアラビア、4位日本等である。潜在的国債デフォルト国は最下位183位アメリカ、181位イタリア、180位フランス、179位スペイン、175位イギリス、173位ギリシャ、172位ポーランド、171位ポルトガル等である。黒字が出る見込みのない会社は、いくら借金で手形を落としても必ず何時かは潰れるように国家にしても同じである。
アメリカ連銀総裁が非公式に口を滑らした。
「ドイツを除く欧州諸国は1日も早く経済破綻すべきである」と。
世界最大の対外債務国、世界最大の恒常的経常赤字国アメリカのFRBの理事の言葉とは思えない発言。
「成長なくして資本主義無し」!
「世も末」ということである。
だが日本には当たらない!
20年間デフレでゼロ成長、国民の預貯金が1,500兆円だから国の債務がGDP比230%の1,000兆円もあってもまだ500兆円も国債需要(買える能力)があり、他に530兆円以上の対外債権(連続21年間世界一)を持つ日本は、誰にも気付かれないように静かにきらめいている。
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