トルーマンは何故広島・長崎に原爆を投下したのか?
今回の「小冊子」(Vol.38)第4章で、「トルーマン大統領の言う原爆投下理由、早期戦争終結は大ウソ」!とし、本当の理由を解説した。
第3章でも述べている通り、ルーズベルト大統領(トルーマン大統領の前任者)は日本の真珠湾攻撃の日時と規模を正確に知っていながら攻撃前夜全艦隊に外出禁止命令を出し、その結果2,273名の海兵隊員が犠牲になった。政治戦略の為なら平気で自国の兵隊を殺害するアメリカの大統領が早期戦争終結で人命の犠牲を減らす等、「お笑い草」であった。本当の理由は言うまでもなくアメリカの世界戦略の為である。やがて対決が迫っていた共産圏の盟主ソ連にアメリカの「核の脅威」を見せつけておくことと、やがて「アメリカの資産になる日本」(第2章)が二度とアメリカに対抗する意志を持たぬよう肝に命じさせる為であった。
本誌では、さらにアメリカの広島・長崎原爆投下の政治戦略的意義について述べることにした。世界政治を支配するには世界を叩く「鞭」(脅威)を持つことが肝要。従って世界が慄く「脅威の創造」が必要である。アメリカは何度もアトムとプルトニュームの原子爆弾の実験を繰り返し、すでに1945年には両爆弾を完成していた。いくら正宗の宝刀を研ぎあげても「辻斬り」をして、切れ味を確かめなくては名実ともに「天下の宝刀」にはなり得ない。
トルーマン大統領は広島にアトム、長崎にプルトニューム原爆を投下した後200有余の医療救護団を治療という名目で日本に送り込み、アトムとプルトニュームが人体に及ぼす致命効果や遺伝子への影響等の調査を行った。
アメリカは30万人の尊い日本人の命と被爆者の人体検査によりアメリカの核戦力に「脅威のお墨付き」を手にし、アメリカの核を名実ともに「世界の脅威」に仕立て上げたのであった。
国連安保常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国)は核保有国であるが、アメリカ以外の国は砂漠や地下で核実験をして多くのサソリは殺しただろうが、広島や長崎のような人間社会で実験(辻斬り)と人体検査(切れ味)をしていないから彼らの核には脅威のお墨付きはなく、保有しているだけの「張り子のトラ」でしかない。従って他の核保有国はアメリカの核の「真の脅威」には到底太刀打ち出来ないのである。広島・長崎の原爆被害の悲劇と悲惨が世界に知れ渡れば渡るほどアメリカ以外の核保有国は人間社会での実験が出来なくなり、アメリカの核の脅威だけが重くのしかかり、非核国はアメリカの核の傘の下に集まるのである。
アメリカがスミソニアン博物館などで積極的に広島・長崎の悲劇を公開するのは、アメリカが原爆による無差別、大量殺戮の謝罪や反省を意図しているのではなく、核の恐ろしさを見せつけることでアメリカの核の脅威を誇示しているのである。アメリカの広島・長崎原爆投下の政治戦略的意義は、戦後の「世界の軍事脅威の核心を核と定める」と同時に、「アメリカの核のみを唯一の脅威」に仕立てたことであった。真の核の脅威の創造が戦後アメリカを世界政治の指導国に押し上げたのであった。
政治は「支配」を求め、そして「脅威が支配」である。
核に勝る新たな脅威と人間社会での人体実験が行われない限り、アメリカの核は世界の脅威であり続け、アメリカの世界政治支配は変わらない。
では、戦後被爆国日本はどうなっただろうか。日本はアメリカに対する対抗を禁じた憲法第9条により自国の安全に責任を持てず、核を持てても持てぬ国。日本は通常の国家の政治目的である安全に責任を持てない「異常国家」になった。自国の安全に責任を持てぬ日本が世界の安全に責任を持つ「国連安全保障常任理事国」に立候補して世界の嘲笑の的になったこともあった。
またもや何時もの私の例え話になるが、「女中さんがいくら金持ちになってご主人様の屋敷を買っても女中さんは女中さん、ご主人様はご主人様」なのである。私ごとだが、若い時、人生は短いのだから支配される国より支配する国の方がいい、寄らば大樹の陰、と思いアメリカの永住権者になった。
おかげで「マスダはアメリカ人よりもっとアメリカ的だ」と言われるようになった。広島・長崎原爆投下の記念日が来る度に、「日本はこのままでいいのか」と、ご先祖様たちと子孫達に責任を感じてならない。
日本の政治家の皆様にも「アメリカ人よりアメリカ的」になってもらうしかないのかも知れない。
永遠に変わらぬ「人類支配の政治哲学」とアメリカの世界戦略の犠牲者にされてしまった皆様のご冥福を祈りたい。
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