第819(2013年4月8日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com
携帯サイト http://mobile.chokugen.com/

黒田新日銀総裁の大胆緩和政策の「異次元性」の「異常性」。「通貨の番人」の規律喪失

私は「時事直言」(www.chokugen.com/)で4月4日に発表された黒田新日銀の異次元かつ大胆と言われる金融緩和導入決定についての「異常性」を述べた。
国民の資産と経済活動の「糧」であり国民経済の価値を代表する円通貨発行の自由裁量権を持つ日銀は明治以来通貨発行に於いて厳しい規律を自ら課してきた。市場や実体経済の通貨需要以上に通貨を発行すれば通貨価値が低下し国民資産と経済価値(購買力等)を奪うことになる。
国民が何十年もかかって貯蓄した預金や持家の価値が奪われるようなことが無いよう、日銀は「(必要があって)市場に流通している通貨量以上に新たに通貨を発行して国家の負債(国債)を購入しないことを自ら決め、「日銀のルール」として守ってきたのである。
黒田総裁の言う「異次元の金融緩和」とは、「日銀券ルール」の無視であり、市場が示す実体経済の通貨需要を一切考慮せず、マネタリーベースを単純に倍増するなど「通貨の番人」としての中央銀行(日銀)の国民に対する「責任放棄」である。

日銀と次元の違うFRBへの追従

黒田総裁が言う異次元の緩和はFRB(連邦準備理事会)やECB(欧州中央銀行)が5年以上続けている金融緩和政策への追従以外の何物でもない。
円は日本だけに通用するローカル通貨であり、円は国際通貨であるドルや欧州の共通通貨ユーロとは機能、責任、支配力(影響範囲)において似ても似つかぬ存在である。国際基軸通貨の責任者FRBの金融緩和政策は世界経済を主導する米国と世界経済が対象であり、米議会を通して世界市場に説明責任を果たしている。ECBについても同じである。従ってFRBは世界経済を、またECBは欧州経済を対象とした質と量の両面にわたる金融緩和政策を決定し市場に説明をしている。円はローカル通貨として日本国内のみで通用する通貨であるから中央銀行(日銀)としての金融政策の対象は世界ではなく日本経済のみである。
前回の本誌や報道で黒田日銀の緩和内容については説明されているから省略するが、黒田総裁は向こう2年間(2015年まで)で物価目標2%を達成するまで月間7兆円規模の緩和を決めている。これは月間$85 billion (約8兆円)の緩和を実行しているFRBとほぼ同じ緩和量である。日本のGDP(国内総生産:約500兆円)の3倍(約1,500兆円)の経済規模と世界経済を視野に入れたFRBとほぼ同額の量的緩和を日銀がする根拠と理由は何か。通貨の機能、責任、影響力がドルと根本的に異なる円の責任者、黒田総裁の、国際基軸通貨ドルの責任者であるFRBに追従する神経は「異常」以外の何物でもない。黒田総裁の言う「異次元」とはローカル通貨(円)を国際通貨という異次元に仮想して金融政策を行うという意味なのだろうか。

ネタ無き「黒田マジック」と恐るべき結果

債権購入量も「倍増」、マネタリー・ベース(通貨供給量)も市場(コール市場)無視で「倍増」(138兆円から270兆円)、長期債購入倍増(190兆円)、リスク債権(ETFやREIT)の購入も「倍増」(ETF年間1兆円買増し)、国債保有残存期間も3年‐4年前後から「倍」の7年以上、、、。
黒田総裁は「市場と会話をする」と言うが、一方的に「何もかも倍にする」と宣言しただけでは市場との会話にはならない。黒田総裁は「倍々ゲーム」の理由を市場に一切説明しなかったし、また出来る筈がない。「黒田マジック」の手品には「種」は無く、あるのは、ありもしないものを、あるかに見せる催眠術だけである。黒田マジックの結果は、1985年のプラザ合意後の1998年から1991年まで続いた「土地神話」と「ニッケイ平均38,957円」(1989年2月29日)の狂乱と、後にバブル崩壊で奈落の底に落ち込み、20年間苦しんだ日本の再現である。黒田マジックは国民の預金をリスク金融商品(株式等)と不動産に強制誘導し、銀行に必要以上の融資を促す、正に日本を「一億総バブル」に追い込もうとしているに他ならない。経済基盤がぜい弱な日本で増大する仮需要資産は潜在成長率を高めながら経済復活が確実になってきたアメリカのNY株式市場、米国債、米不動産等へ押し流されるのが宿命。そして日本の銀行融資が限界に達し、余剰含み資産の増大化が止まるとアメリカは金融、住宅市場をバブル崩壊に誘導するからアメリカに流れた日本の資産は返ってこない!
アメリカに奪われる日本の資産とは、日本人が一生懸命貯めた銀行預金、タンス預金、銀行から無理やり押し付けられた借金である。失った資産回復にはまたもや20年かかるであろう。

アメリカは何故黒田大胆緩和を歓迎するか

アメリカは5年以上の金融緩和政策を続けた結果住宅価格が上昇に転じ、結果家計の資産増で消費が着実に伸びている。さらにシェールガス・オイル革命でエネルギー・コスト(電力コスト)が下がりアメリカ潜在経済成長率が上昇、アメリカ経済復活の基盤が固まりつつある。このように長期金融緩和政策の実効が明確となりつつあることから、FRBは金融緩和の出口を模索し始めている。今後のアメリカ経済のリスクは金融緩和中止による金利上昇、株価下落、さらに長年の大型金融緩和の副産物、財政赤字である。黒田大胆緩和による対ドル円安でアメリカの国際競争力が落ちることはオバマ大統領が唱える輸出倍増計画にとって由々しき問題であるが、バーナンキFRB議長が黒田緩和を「多くの国に有利」などと持ち上げ、決して市場介入などと批判しないのは何故か。
それは黒田緩和はジャパン・マネーの米国への強制移動だから。(今後発表される)50兆円規模の米国債購入でアメリカが心配する緩和出口による金利上昇にストップがかかるばかりか株価を下支えする。さらに日本はアメリカの金融緩和による財政赤字を買わされることになる。アメリカの対日世論操作は今に始まった事ではないが、安倍政権誕生と黒田日銀の異次元緩和のタイミングはアメリカにとって最高である。

市場はもう「黒田マジック」の答えを出している。

4月5日午前中、日本の債権市場で想像を絶する黒田緩和内容がもとで債権買いが殺到し10年物国債の利回りは0.315%に急落、史上最低金利を記録。
ニッケイ平均も591円高で1万3,225円をつけた。ところが後場に入ると債権先物市場で債権価格が制限価幅いっぱいに急落、市場は取引停止。取引再開後さらに急落が続き2度目の取引停止。午前中の利回り0.315%は0.62%まで急騰し、株価も591円高は199円高に終わり1万3千円を大きく割り込み1万2,833円で終わった。
4月5日の債権市場に吹き荒れた午前の「債権買い殺到」と午後の「債権売り殺到」は「決して説明出来ない黒田異常緩和政策」への市場の回答である。
「日本経済一時的狂乱後は奈落の底」を見事に示唆している。

増田俊男の「目からウロコのインターネット・セミナー」大好評配信中!
1ヶ月¥1,000ご契約は1年単位になります

現在大好評配信中のインターネット・セミナー!視聴期間はお申込み翌月より12ヶ月となりますのでお申込み月は無料でご視聴頂けます。詳しいご案内、お申込みについては増田俊男事務所(HP:www.chokugen.com )まで。


増田俊男の「ここ一番!」 大好評配信中!
現在大好評配信中の増田俊男の「ここ一番!」。本年中ニッケイ15,000 円!来年夏までに18,000 円!世界のマネーが日本に向かう!刻々と変わる相場を先読み、即座にアドバイス。購読期間は、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月と3プランご用意しています。詳しいご案内、お申込みについては増田俊男事務所(Tel:03 3955-6686、HP:www.chokugen.com )まで。





増田俊男への講演依頼 受付中!
増田俊男事務所は依頼講演を承っています。
国際市場経済、政治、経営戦略等多岐にわたる「目からウロコ」の内容です。
お問合せは、増田俊男事務所(03-3955-6686)まで


増田俊男のラジオ放送、大好評放送中!
増田俊男の「逆手で勝つ!」〜日本復興のために〜(ラヂオもりおか)
月〜金曜日 午前8:20〜8:29
*インターネット生放送(サイマルラジオ)は下記URLから「ラヂオもりおか」をお選び下さい。毎日生放送でお聞き頂けます。http://www.simulradio.jp/
*ストリーミング放送は下記URLから1週間分をお聞き頂けます。
http://radiomorioka.co.jp/streaming/sakate_katsu/ (毎週土曜日更新)



*増田俊男のプライベート・コンサルティング【面談・電話・FAX・e-mail】のご案内。

 お問い合わせは、増田俊男事務所(FAX:03‐3955-6466 メール:info@chokugen.com )まで



「時事直言」の文章および文中記事の引用ご希望の方は、事前に増田俊男事務所(FAX 03‐3955-6466)までお知らせ下さい。


前へ 平成25年度 次号へ
株式会社増田俊男事務所
FAX:03-3955-6466
e-mail : info@chokugen.com