日米金融政策逆方向
2008年リーマンショックが象徴する資産バブル崩壊から2013年4月まで日本を除く世界の先進国中央銀行は金融緩和と言う名の通貨安競争を繰り広げた。
一人白川日銀総裁だけはかたくなに「日銀券ルール」(マネタリーベースM2以上の緩和をしない)を守り、日銀資産をGDP(国内総生産)比10%前後に保った。
ところが2013年4月4日白川総裁に代わった黒田総裁は「異次元金融緩和」と銘打って、前年(2013年)末のマネタリーベース138兆円の約2倍に当たる270兆円の緩和額を発表した。
FRB(連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)、BOE(英国中央銀行)のいずれの緩和額もGDP比25%前後であるのに比して黒田異次元緩和のGDP比は約60%と言うとび抜けた額である。
日銀が政策転換で超大緩和政策を打ち出した翌月の5月、FRBのバーナンキ議長は適切な時期にQE3の緩和縮小を予定していると議会証言。
アメリカは緩和縮小、日本は超緩和開始と続行、金融政策日米逆方向となった。
イエレンFRB議長や一部連銀総裁の発言から緩和政策終焉から引締(利上げ)政策に移行するのは来年2015年第1四半期が想定されている。
日本経済の指針に逆行する日銀
財政政策であれ金融政策であれ、すべての経済政策は国家経済の現状と将来のあるべき方向に指針を合わせなくてはならない。
10年来日本企業は200兆円以上の余剰資金を抱え、国内需要の低迷からデフレ状態継続の為M&A(企業買収)を含む海外直接投資を行ってきた。
本年1‐6月の対米M&Aの額は2兆5,000億円で870%(前年比)、対欧州1,560億円(+60%)、対アジア7,000億円(+37%)等々全体では半年で3兆4,000億円(+260%)である。日本企業はここ10年以上海外に活路を求めるのが企業の方向性となっている。
ではこうした日本企業の後押しをするための金融政策はどうあるべきなのか。
「安いコストで海外投資をするには円安政策か、それとも円高政策か」?
アメリカはQE3で資産価格(株価・不動産)を高騰させながら世界中の資金をアメリカに集中させているため株価は連日高値を更新し、今やピーク。
アメリカに流入した外国名義の資金をアメリカの名義にし、安いコストで海外直接投資を行うにはどうしたらいいのか?
アメリカ最大の競争相手の日本企業の為にならない円安政策を日銀に続行させておいてアメリカは利上げで市場を株価暴落に誘導、暴落による海外投資家の損をアメリカの得に変えながら利上げで強くなったドルで株価暴落の結果安くなった成長センターに直接投資する。
「寄らば利口者の陰」。
日本からアメリカに本社を移転する経営者の気持ちがよく分かる。
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