増田俊男の「下山の哲学」よ、もう一度。
2012年11月6日に発効した「2012年大総括号」(Vol.40)で「下山の哲学」について述べてから1年半になる。以後世界は「下山の哲学」通りに動く。
先進国の経済成長率はインフレ率を引けばすべてゼロ又はマイナスになっている。「登山の哲学」時代は自らの成長に他国の成長のパイを加えるため自由市場で競争を展開してきた。
政治は自由競争を阻害する独裁体制の民主化と自由市場拡大のために必要な行動を執った。国際的政治の不安定(地政学的不安)は市場の為にならないのでアメリカ主導で行われた武力または内乱による独裁国家の壊滅以外は極力国際紛争を押さえてきた。
ところが私が年初(本年)指摘したように冷戦が進行し始めウクライナや中東で軍事抗争や内乱が表面化しはじめ、それは一国の問題に止まらず国際化してきた。
一方NY市場はもとより先進国市場はFRBを筆頭に中央銀行の主導下により、あらゆる分野の市場価格が完全に市場原理から逸脱するに至った。
中央銀行が通貨を増刷すれば貨幣価値が下がりインフレ化する市場原理に対抗して中央銀行は増刷した通貨で政府発行の国債を買い続け、国債利回りを下げ、さらに政策金利をゼロ・パーセントに誘導することで市場金利を下げ続けている。正に通貨当局の操作(Manipulation)による市場機能停止である。
今や国際政治は冷戦に向かい、市場では市場原理機能が停止している。
私は「下山の哲学」の時代では成長のパイがないから既存のパイの奪い合いになると述べた。今後拡大する冷戦は既存の資源の奪い合いであり、市場原理の機能停止は世界の中央銀行であるFRBの既存の世界資金略奪が根底にある。
「下山の哲学」の先に悲惨な世界が待ち受けている。
「登山の哲学」の時代の優等生、先進国中真っ先にデフレ時代を迎えた日本人はGDP比300%もの現金資産を持っている自由市場の金メダリストである。
これから始まる奪い合い、騙し合いの世界にあって、もし日本人が笑われながらも世界に与え続けるなら、世界は暗黒の中に日本人と言う光明を見出すだろう。
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