増田俊男の「時事達観」
私は「下山の哲学」という言葉を創った。
21世紀になり先進国の生活水準はピークに達し、モノやサービスの需給関係がやや供給過剰になり物価は上昇せず、下落気味(デフレ状態)に陥り、インフレ調整後の経済成長はゼロまたはマイナスになった。
先進国の経済成長の停滞と時を同じくして政治覇権競争の時代が終わった。
人類の経済成長・政治覇権拡大が頂点に達した20世紀の時代から経済低成長・政治非覇権の21世紀に移ったのである。
正に時代は「登山の時代」から「下山の時代」になった。
私はかつての「小冊子」で「時代の変化による価値観の変化」と「変化に対応する生き方」につき解説している。
1944年7月アメリカのニューハンプシャー州ブレトンウッズ市に連合国44カ国が集まり、IMF(国際通貨基金)をはじめとする戦後の国際金融体制を決め今日に及んでいる。
しかしブレトンウッズ体制の中心的存在であったアメリカの経済成長は停滞、軍事予算は毎年削減でオバマ大統領が「アメリカは最早世界の警察ではない」と宣言したようにアメリカは既に世界政治覇権を断念している。
日本を筆頭に先進国の歳出は常に歳入を上回り結果公的(中央・地方)負債は返還不能に陥っている。
先進国に課せられていることはマイナス成長から脱出するため技術開発(イノベーション)と政治・経済構造改革による生産性向上と競争力強化以外にない。
2008年9月のリーマンショックから世界は不況入りしたが、本来成長が止まった時代の不況対策は、不況を放置して落ちるところまで落として自律回復を待つのが本来であるが、FRB(連邦準備理事会)の主導で世界中が金融緩和に走り今日の資産バブルを招いた。安易な「緩和政策は生産性の敵である」。
緩和は生産性向上でなく通貨安で競争力を付けようとする邪道の政策である。
今の好況感は、実際には存在しない「仮想資産」を反映しているに過ぎない。
バブルは何時までも続かない!
第2四半期に入って欧州、アメリカ、日本等先進国のGDP(国内総生産)が年率で3%だとか4%だとか囃しているが、年率と言うなら過去1年の「傾向」を見なくてはならない。
先進国の経済成長は明らかに低迷が続いている。
「2カ月連続マイナス成長なら不況」、「2カ月連続プラス成長なら景気回復」と言うのはBear(売り方)とBull(買い方)の宣伝文句でしかない。
今先進国経済は不況下にあること知りながら利上げを目論むFRBの真意のほどは今回の「小冊子」(Vol.69)で学んで欲しい。
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