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平成30年度一覧
1245号(2018年5月14日号)
米朝会談に向けトランプ援護に徹する金正恩

アメリカのキングメーカー、外交問題評議会(CFR)とキッシンジャーがトランプを大統領に選んだ目的は戦後世界の警察官になりアメリカの支配者として君臨してきた軍産複合体(軍産)の主導権をホワイトハウスに取り戻すこと。
トランプは「アメリカは最早世界の警察官ではない」と宣言し、「アメリカファースト」(自国の利益だけに責任を持つ)の下に中東、欧州、日本、韓国を含むアジアの同盟国等世界35か国から米軍(軍産)を撤退させようとしている。
トランプはアジアの同盟国の安全を保障してきた「アメリカの核の傘」(核抑止力)と北朝鮮が持つに至った対米核抑止力の同時撤廃を狙っている。
朝鮮戦争は、現在休戦状態であり、北朝鮮の脅威である在韓米軍が存在したままである。金正恩が主張するように、停戦協定を終戦協定に換えることなしに北朝鮮だけ先に武装解除(核廃絶)することはあり得ない。
軍産はトランプに北朝鮮の核廃絶は、CVID(Complete, Verifiable, Irreversible, Dismantlement:完全で、検証可能かつ不可逆的な非核化)を条件にするよう要請、軍産・マスコミ(CNNなど)のプロパガンダによる内外世論もあってトランプは受け入れざるを得なかった。すでに本誌で解説した通りCVIDは「リビア方式」と言われ核保有国の体制を軍事崩壊、指導者(サダム・フセインやカダフィーなど)を抹殺する国家主権無視方式である。北朝鮮の体制(主権)を維持したままでのCVIDは不可能であることは軍産もトランプも知るところ。
軍産がトランプにCVIDを強要するのは金正恩にCVIDを拒否させて米朝会談を決裂させる為である。(米朝が敵対関係に戻れば在韓米軍=軍産維持、日韓の武器購入額は増大する)トランプは軍産の意向に従いCVIDを主張しながら、何故米朝会談は大成功すると自信満々なのだろうか。北朝鮮は5月12日、6月12日の米朝会談に先駆け、5月23‐25日に北方核実験場を完全封鎖し国際社会が検証出来る形で破棄すると発表し、トランプは待っていましたとばかりツイッターで金正恩に「感謝の意」を表した。米朝会談でトランプは北朝鮮の核実験場破棄を歓迎し受け入れざるを得ないからCVID方式は自ずと消滅し、中国、韓国、なかんずく北朝鮮が望む段階的に歩調を合わせながら廃絶する方式になる。
トランプが金正恩に感謝したのは、トランプが従った振りをしたCVIDを無効にし、軍産の米朝会談ぶっ壊しの望みを絶ってくれたからである。朝鮮半島の平和と非核化が米朝韓3国主導で「中国外し」が進むのを恐れて二度も中朝首脳会談を繰り返したり、日中韓三国首脳会談で三国の結束をアピールした中国に応える為トランプと金正恩は習近平を米朝首脳会談に招くだろう。朝鮮戦争終結協定には停戦協定署名(当時)者である国連(米軍)、北朝鮮、中国の参加が求められる。当時の大韓民国李承晩大統領は停戦に反対し、協定に署名していないが、韓国軍は国連軍の一部として合意したことになった経緯がある。米朝会談が歴史的なものになるとトランプも金正恩も言っているが、それが朝鮮戦争終結宣言であるのなら、習近平が参加するのは当然である。「朝鮮半島非核化」の名の下にトランプと金正恩は利害が共通している。朝鮮半島からの北朝鮮の核撤廃と米軍(軍産)の撤退はトランプと金正恩の望むところである。私が本誌で、今後の朝鮮半島の平和と非核化は、軍産後退までは米中朝韓4か国体制で進み、軍産の撤退後は米朝韓三か国体制になると述べたが、トランプと金正恩が米朝会談に習近平を招くのは予定のコースである。


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